SaaSの重要KPI「ユニットエコノミクス」を詳しく解説

SaaSの重要KPI「ユニットエコノミクス」を詳しく解説

はじめに

SaaS(Software as a Service)ビジネスにおいて、事業の健全性や成長性を測る上で重要な指標の1つに「ユニットエコノミクス」があります。本記事では、このユニットエコノミクスについて詳しく解説し、SaaSビジネスにおける重要性や活用方法について説明します。

ユニットエコノミクスとは

ユニットエコノミクス(Unit Economics)とは、1顧客あたりの採算性を表す指標です。具体的には、顧客から得られる生涯価値(LTV: Lifetime Value)と顧客獲得コスト(CAC: Customer Acquisition Cost)の比率で表されます

計算式:ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

この指標は、SaaSビジネスにおいて顧客獲得の効率性や事業の収益性を評価する上で非常に重要です

LTVとCACの詳細

LTV(Lifetime Value)

LTVは、1人の顧客がサービスを利用する期間中にもたらす総収益を表します。計算式:LTV = 顧客の平均単価 ÷ チャーンレート(解約率)

CAC(Customer Acquisition Cost)

CACは、新規顧客1人を獲得するために要するコストを表します

計算式:CAC = 顧客獲得コストの総額 ÷ 新規顧客獲得数

ユニットエコノミクスの目安

一般的に、ユニットエコノミクス(LTV/CAC)が3倍以上であれば健全な状態とされています。つまり、顧客から得られる生涯価値が顧客獲得コストの3倍以上であることが望ましいとされています。ただし、業界や事業のステージによって適切な値は異なる場合があります。例えば、D2C(Direct to Consumer)ビジネスの場合は2倍程度が目安とされることもあります

ユニットエコノミクスの重要性

  1. 事業の健全性評価:ユニットエコノミクスは、顧客獲得の効率性と収益性を同時に評価できる指標です
  2. 成長戦略の判断:ユニットエコノミクスが健全であれば、積極的な顧客獲得投資を行う判断材料になります
  3. 投資家への説明:SaaSビジネスの将来性を示す重要な指標として、投資家にも注目されています

ユニットエコノミクスの改善方法

ユニットエコノミクスを改善するには、LTVを向上させるかCACを低減させる必要があります。以下に主な改善方法を挙げます:

  1. 顧客維持率の向上:解約率を下げることでLTVが向上します
  2. アップセルクロスセル:既存顧客の単価を上げることでLTVが向上します
  3. マーケティング効率の改善:効果的なマーケティング施策を実施し、CACを低減します
  4. 製品の価値向上:顧客満足度を高め、長期利用を促進することでLTVが向上します
  5. オンボーディングの最適化:新規顧客の定着率を高めることでLTVが向上します

まとめ

ユニットエコノミクスは、SaaSビジネスの健全性と成長性を評価する上で非常に重要なKPIです。LTVとCACのバランスを適切に保ち、継続的に改善していくことが、SaaSビジネスの成功につながります。ただし、ユニットエコノミクスだけでなく、ARR(Annual Recurring Revenue)やチャーンレートなど、他のSaaS KPIも併せて評価することで、より総合的な事業評価が可能になります。SaaSビジネスの経営者や担当者は、これらの指標を適切に活用し、事業の成長と最適化に努めることが重要です。

Read more

企業規模に関わらずマーケでよく起こる問題

企業規模に関わらずマーケでよく起こる問題

ぱっと見華やかなので人気職種らしい。  マーケティング職は学生や若年から人気のようだ。マーケを生業としてる私からは誇らしい話だ。華やかそうに見えるからかと思うが、実際マーケの現場はかなり地味なタスクも多い。その1つがデータ分析になる。今はテックも進化したのでそこまで負荷は掛からずともできるがそれと合わせて謎の英単語3文字省略の多さ。言語を覚えるのも大変だった記憶がある。そんな職種だから私も本当に何も知らない子が会社都合や本人希望による異動で受け入れた。大企業の時はCMなどで華やかなイメージがあり、移動希望者が多かった、ベンチャーの時は会社都合の異動などがあった。当然その人たちはCVRなどの数多の用語を知らない。そんな子達を受け入れなくてはならないマネージャーは一層の負荷がかかる。当たり前に使ってた表現を選ばなくては伝わらない。 ビジネス基本スキルも怪しい子が異動希望を出すケースもあり・・教育工数が莫大になる  ごく稀な例だと思うが過去エクセルすらろくに触れない子が部下だった。GAよりも基礎中の基礎だと思ったが、ひたすらに飛び込み営業してた子なら仕方ない。  そのような状

By yuki.mori, 土田倫生佳
Martechコミュニティをつくりました!

Martechコミュニティをつくりました!

Martech(マーケティングテクノロジー)に特化したSlackコミュニティを作成しました! Slack 近年、マーケティング領域ではAIやデータ活用が加速し、新しいツールやソリューションが次々と登場しています。そんな変化の激しい分野だからこそ、情報交換や学び合いの場が必要だと感じ、このコミュニティを立ち上げました。 🌟 参加メリット: * 業界の最新動向をいち早くキャッチ * 実際の導入経験や失敗談を共有 * 専門家からのアドバイス * 同じ課題を持つ仲間との出会い * キャリアアップのヒント マーケティングオートメーション、カスタマーデータプラットフォーム、アナリティクスツール、AIマーケティング...あらゆるMartechトピックを扱います。 初心者からエキスパートまで、どなたでも歓迎です!一緒にMartechの未来を創っていきましょう。

By NeX-Ray
ここ数年のマーケの変化

ここ数年のマーケの変化

私は約10年ほどマーケの世界にいます。大企業やベンチャー、ToBやToC、メンバーから部長、CMOなど役職や所属企業も様々です。 元々変化の激しい領域ということは理解してますが、この数年は特にかもしれません。 コロナによりオフライン系の施策は停滞しました。以前からですがSNSなどの流行により、圧倒的にタッチポイントが増え予算分配など単体や少数のみを考慮すれば良い時代は終わったと言えます。以前からアトリビューションやMMMというような統合して分析をしようという概念は存在してました。どちらも当時は課題がありました。アトリビューションはwebのみでオフラインやアプリは対象外で、webに閉じた施策でした。MMMは広域に施策を統合した分析概念でしたが、当時は扱うことも難しく。ただタッチポイントが増え続けていることは事実で技術も進化を続け当時よりもより簡易に高度な分析を行うことができるようになりました。 このタイミングでマーケプランを最適な形に作り上げることを再チャレンジしてみませんか?当時難易度により解を出せず挫折した方は今の技術を目の当たりにしたら当時の構想が実現できる可能性があります。

By 土田倫生佳
マーケのインハウス化を目指す上で

マーケのインハウス化を目指す上で

安直にインハウスを進めてはいけない  マーケのインハウス化を志す方はこれまでマーケ施策を代理店に依頼していたケースが大半です。  広告主のタスクとして、月額(ないしは年)の予算を超過しないか否か、日々の数値を確認することが重要です。  単一の代理店に依頼しているケースならさほど問題はないですが、施策ごとに複数の代理店を使うケースもあります。  そうなると、アロケーションなども含め自分たちで差配する必要があります。大多数の代理店は依頼を受けている領域の分析は行いますが依頼外は行いません。つまりは、自分たちでアロケーションの差配やデータ分析・レポーティングなどを行う必要があります。このタスクを安易なものと考え、インハウス化を進めようとする広告主がいくつかいます。 マージン無くなってもその分工数がかかるので本質的なコスト削減にならないケースもある  もちろん自分たちでやれば代理店へのマージン分の支払いがなくなり、一見コストカットのように見えますがこれまで代理店が実施してくれていた領域を自分たちでやろうとすると、それ相応の人件費や時間がかかります。これは当然、広告宣伝費が高い大企業にな

By 土田倫生佳, yuki.mori